ご褒美が子ども達の未来にマイナス影響になる?? ~アンダーマイニング効果と言語的報酬~
- 2025.05.21
- MESSAGEPERSONAL COACHING
『この試合でハットトリックしたら〇〇を買ってあげる!!』
そんなご褒美を用意して、子どものやる気を促進する。実際に息子のサッカーチームでもなんらかの報酬をちらつかせる作戦を活用している保護者の方々もいるのですが・・・
これが良いのか悪いのか?? そんな議論になることもあります。
私なりの見解としては・・・
『スポット的には良いかもしれないが、継続的にはよろしくない』
『ポイントがずれていると逆効果になることもあり得る』
その他場面でも、「お手伝いをしてくれたら、小遣いゲット制度」などを導入しているご家庭もあろうかと思います。実は我が家も一時的にそんな制度を導入していた時期がありました。最初は子ども達のやる気も向上して積極的にお手伝いをしていたのですが、だんだんとそのテンションもフェードアウトして、今や制度崩壊しています。まあ、その名残りでお手伝いする感覚は少し身についたけれど・・・
これを専門的には、『アンダーマイニング効果』と言うそうです。
人間のモチベーションややる気に対する心理現象の1つ。
内発的動機から行っていた行為に対して、報酬が与えられることで外発的動機付けがされるとモチベーションややる気が低下してしまう現象のこと。
「undermine」には、「損なう」「弱らせる」といった意味があるらしいですね。
内発的動機付けとは、好奇心や興味関心、やりがいなどをもとに自らやりたいと考えること。外発的動機付けとは、他人から報酬や評価を得るため、または罰を回避するために行動しようとすること。
例えば、趣味で楽しんでいたことを、仕事にしたら楽しめなくなってしまった・・・これもアンダーマイニング効果の影響と言えるでしょう。
先日読んでいた本には、ご褒美が子どもの将来に悪影響を及ぼすことがあるという研究結果が掲載されていました。ある研究機関が、1000人程度の大人を対象に、子どもの頃、勉強や運動で良い成績を残したときに、親からどんな対応をされていたのかをリサーチ。
その結果、子どもがその当時に受けた対応は大きく3種類に分けられた。
①ご褒美をもらっていた
②努力やそこまでのプロセスを評価された(EX 「頑張ったね」)
③成果や結果を評価された(EX「すごいね」)
そんな子どもたちが大人になったとき、「ご褒美をもらっていた」グループは、計画力、実行力、ルール遵守などのいわゆる”非認定能力”のスコアが最下位という結果に。
最も高いスコアを出したのは「努力やプロセスをほめられた」グループという結果に。
そんな研究結果からわかることは・・・
ご褒美をうまく活用するためには、結果や成果に対してではなく、そこに至るまでの努力やプロセスに対して与えるというスタンスであることが重要だということ。フォーカスする部分の問題ですね。
ご褒美を与えるタイミングでちょっとしたワンフレーズを付け加えたほうが効果的で、そのポイントは、才能や結果に対してではなく、行動したこと、努力を継続したことを褒める。そのちょっとしたフィードバックフレーズの違いで、そのご褒美と言葉が子ども達の未来のプラスに働くかマイナスに働くかが異なってしまうわけです。これは注意深く気を付けたいところですよね。
このフィードバックフレーズのことを『言語的報酬』と呼んだりします。
アンダーマイニング効果を避ける意味でも、物質的な報酬よりも、言語的報酬をしっかり与えるほうが人のモチベーションの向上に効果的だということなのでしょう。
また、別の視点で言えば、報酬がお金や商品という”モノ”でなくてもよいのではと・・・
”モノ”は古くなって使えなくなって無くなっていくわけですが、子ども達の心の中に良い思い出として残る”コト”は、もしかすると、その子の心に一生残っていく可能性があります。
だからこそ、”コト”をご褒美として与えてあげるのも有益なのかなと考えています。
家族で旅行にでかけたり、キャンプにでかけたり、美味しいご飯を食べに行ったり・・・
個人的には、”コト”プレゼントのほうを重視していまして、先日もファミリーキャンプに行ってきたわけです。もちろん、モノとコトのバランスも調整しながらご褒美提供したらよいのかなと。体験型ご褒美は、子どもの長期的な幸福度を高めるということが研究でもわかっているそうです。
上記にお伝えしてきたポイントがずれていると・・・
『せっかく用意したご褒美が子ども達の未来にマイナス影響になる』
そんなことにもつながってしまう。それは避けたいところですよね。
まあ、少なくとも子どもが欲しいと言ったからすぐにモノを買ってあげるのはよろしくないでしょうし、要望すれば自分の欲しいモノがすぐに手に入るという勘違いを招く。
つまり、それは、その子の自制心やセルフコントロール力を失わせる時間となる。言うまでもなく、自制心やセルフコントロール力が低い人間は、将来的に社会の中で生きていく上で、それが足かせになって、社会的評価が高まりにくいことでしょう。
まあ、ビジネスの世界に応用して考えれば、給料だけ単純に上げただけでは、人間のモチベーションを維持し続けることは難しい。ということなんでしょう。組織やチームのトップ&マネジメント層はそこも理解しておく必要がありますよね。
『物質的報酬』×『言語的報酬』+α(パーソナル報酬)
そんな感じでご褒美のバランス調整ができているか否か。あらためて見つめ直すこと。そして、個々によってモチベーションが高まり維持される要素は少なからず違うので、そこについても認知しておく必要があり、私は、それを”パーソナル報酬”と呼んでいます。
Aさんのパーソナル報酬は旅行に行く時間。
Bさんのパーソナル報酬は人間関係が良い仲間と働ける場所。
Cさんのパーソナル報酬はお客様からの感謝の言葉。
Dさんのパーソナル報酬は、組織の理念ビジョンに共感して働けること。など
そのチームにいる人数分だけ、パーソナル報酬があるということでもあります。
これらを1つひとつ丁寧に認知していくプロセスで、組織やチームの労働環境を見直すヒントや強化の方向性を見出すことができるでしょう。
プライベートにおいても、仕事においても、せっかくのご褒美が未来のマイナス影響になるのはもったいないことなので、プラスにつなげていくためのヒントになればと思って、今日のブログを書いてみました。
お読みいただいた方の何かのヒントと未来のハッピーに少しでもつながれば幸いです。